春のような日差しがまぶしいランチタイム。いつもなら満席のはずの、デパ地下の屋外テーブル席に人がいません。不思議に思って近づいてみると、こんなメッセージが置いてありました。
去年10月の増税以来、そうでなくても苦戦を強いられ、百貨店の閉店ラッシュが止まらないといわれる中、こんな愚策のせいで、お客さんの側からみれば手軽な休憩場所を奪われ、お店の側からみれば売上減少に追い打ちをかけられている印象です。
子どもの頃、ここの最上階には今より広い大食堂があって、お寺の住職だった祖父を囲んで兄弟そろってよく食事を楽しみました。屋上にあった大きな赤いチューリップはからくり時計さながらで、時間が来ると中から親指姫が現れて妹や弟と歓声をあげた、ここは遠い記憶がよみがえる場所。このまちで暮らすよく似た世代なら誰もが共有したであろう風景です。
もうひとつ気になっているのは商店街の景色。私がこのまちを離れる以前は、目抜き通りのテナントといえば高級ブティックで、飲食店はほとんどなかった気がします。それが、近年ではインバウンド向けに中国語のアナウンスを流すドラッグストアやテイクアウトのドリンク屋さんが増加の傾向です。
どこかで見た景色だと思ったら、半年ほど滞在したことのある南インドのケイン・ジュースを思い出しました。ある人にこの話をしたら「日本はもはや後進国」だとのこと。人口が減少に転じた成熟社会に経済成長は見込めなくとも、冷え込んだ消費を活性化することなら、政府の決断ですぐにでもできるはず。かろうじて今ならまだ間に合うでしょう。でも、今の路線のままで10年が経過したら「遠い記憶がよみがえる場所」は完全に消し去られてしまうのではと思えてなりません。