わたしの母もわたしも、浄土真宗のお寺に生まれました。わたしの遠い記憶をたどれば「しんらんさま」という絵本に行き当たります。わたしにとってしんらんさまは、ずっと昔のおじいちゃんという感覚でした。
そのしんらんさまは、ご自身が生きた時代を「五濁の悪時」、 五つの濁りのある悪い時代 ととらえました。五濁とは次の5つをいいます。
① 「劫濁こうじょく 」とは、時代の汚れ。疫病や飢饉、動乱や戦争が続発する状態です。
② 「見濁けんじょく」とは、邪悪で汚れた考え方や思想が常識となってはびこる状態 です。
③ 「煩悩濁ぼんのうじょく」とは、 煩悩による汚れということで、欲望や憎しみなど、煩悩によって起こされる悪徳が横行する状態です。
④ 「衆生濁しゅじょうじょく」とは、人びとのあり方そのものが汚れることで、心身ともに、人びとの資質が衰えた状態になることです。
⑤ 「命濁みょうじょく」とは、 命の汚れということですが、それは自他の生命が軽んじられる状態と考えられます。(出典:真宗大谷派東本願寺)
しんらんさまがお生まれになって、まもなく850年。今、わたしたちは、まさに、しんらんさまと同じ五濁の悪時を生きていることがわかります。850年というときを超えて「 疫病や飢饉 」への不安を前に立ち尽くす今、しばし近視眼をはなれて時空の大局をながめてみましょう。このつづきは、また明日。