しんらんさまが生きた鎌倉時代は、飢饉、自然災害、疫病や大小の戦乱に繰り返し見舞われた時代でした。特に飢饉の際には、加茂の河原に餓死者の屍骸が山積みになったといいます。
よほど、東日本大震災等で被災された方でもない限り、現代を生きるわたしたちには想像もできない世界ではないでしょうか。でも、ほんの100年前の新聞で、戦争でも、自然災害でもなく「 停車場に死体堆積す」 と報道されたことがあります。
当時の内務省衛生局の報告書には、日本におけるスペイン風邪の患者総数2300万人、死者約39万人と記されています。死亡者があまりに多かったため火葬場で焼けず、地方に輸送することが増えて駅に死体が積み重なったのでした。
それに比べ今はどうでしょう。世の中でどんなに悲惨なことが起こっていたとしても、今回の新型コロナ感染症ではそれが可視化されることはありません。目には見えないところで情報だけが飛び交い、店頭からマスクが消えたり、ドサクサに紛れて緊急事態宣言が発動できるよう法律が改正されたり。
これでは、不安になるなというほうが無理な話ではないでしょうか。そして、いつの世も、決まって犠牲になるのは、権力から最も遠い人たちです。ただ、そんな中でも、ひとつだけ幸運なことがあるとわたしは思っています。ちょっと前まで、経験を共有できなかったはずの現代人が、今は人類共通の問題に向き合うという経験を共有しているということです。つづきはまた、明日。