唐突ですが、シェイクスピアもパンデミックに翻弄された一人のようですね。16世紀末から17世紀にかけてのイギリスでは、ペストの原因を神の怒りや星の並び、挙句の果てには 演劇のせいだとして「疫病の原因は罪であり、罪の原因は芝居である」から、「疫病の原因は芝居である」と、 セント・ポール大聖堂の説教壇からロンドン市民に呼びかける説教師まで現れたといいます。
今、60歳のわたしが15歳の頃のこと。当時、母が暮らしていたロンドンでシェイクスピア の野外劇「A Midsummer Night’s Dream(真夏の夜の夢)」を観る機会に恵まれました。これは、喜劇ですが、伝記作家たちは、 シェイクスピア の作風を、失恋したりして落ち込めば悲劇を書くと、彼の心理状態のせいにしてきたとか。
憶測はともかく、ペストという疫病に対しシェイクスピア自身が命の危険を感じていたのは事実らしく、結果として作家生活が大きく変貌を遂げて有能な音楽家や劇作家との共同作業ができるようになったのだといいます。
今回の感染症については、その全体像のいかなる段階に今、わたしたちが立たされているのか、依然としてベールに包まれたままですが、仮に日常が戻ってきたときに、もとに戻っていいこととそうでないことを、しっかりと区分けしておかなければならないときかもしれません。