いま、各地で生活保護の申請件数が急増しているといいます。なぜか、ここ数年減少傾向だったという生活保護の申請が、今回コロナで一気に増えていると聞いて、個人的には望ましいと思っています。憲法25条に「すべての国民の権利」を掲げるこの国で、制度の選別主義的な運用がなされてきたこと自体がおかしいと思うからです。
いまから40年以上も昔のはなしになってしまいますが、当時、わたしの母が暮らしていたロンドンでは、学生結婚した無収入の夫婦が国の給付によって、ベッドルームが2つ以上ある庭付きフラット(アパート)で、ゆったりと暮らしていたことを、わたしはよく知っています。つまりそれが、サッチャー以前のイギリスの生活保護制度です。
コロナが来る前、多くの日本人は、この国のあり方に絶望しかけていたのではないでしょうか。コロナを契機に声をあげはじめた日本人の姿は希望ですが、もともと労働者の4割がAI失業を懸念していた時代です。 東京都内で生活保護の受給が決まった男性は「他にも多くの失業者がいる今、仕事の奪い合いになるかもしれない」と不安を口にしていると新聞に書いてありました。
歴史をふりかえれば、こんなとき、人は強いリーダーを求めがち。でも、一見強そうなリーダーが何をしてきたかを、いまこそ、おさらいするときだと思います。イギリスには、鉄の女、マーガレット・サッチャーが新自由主義をもたらしました。日本の新自由主義は、小泉・竹中・安倍などの立役者によって完膚なきまでに我々の暮らしを破壊してきました。そのことを念頭にさらに考えていきましょう。