ボリス・ジョンソンがイギリスの首相になってまもなく一年。ロンドン在住歴が長かった浜矩子さん(同志社大学)の酷評を思い出しました。当初、浜さんはこういっていたのです。「 間違いなく、戦後最悪の英国首相だと思う。これで、戦後最悪の政治指導者は3人目だ。1人目が日本の安倍首相。2人目が米国のトランプ大統領。そして、今回のジョンソン英首相だ。彼らには、三つの共通点がある。一に幼児性。二に不寛容。三に未熟な涙腺。(AERAdot.) 」
あのマーガレット・サッチャーの衣鉢を継ぐといわれたボリス・ジョンソンが、コロナから生還したあと、師匠であるサッチャーの言葉「社会なんてものは存在しない 」を否定してみせた。そのことの意味に改めていま感慨を覚えています。新型コロナウイルス感染症に感染した彼は「助からない可能性もあった」と自ら認める体験を通して、もしかしたら生まれてはじめて「あしたには紅顔ありてゆうべには白骨となれる身なり」という己の脆さを知ったのかも。
それからというもの、給与所得者や自営業者に所得の8割を素早く給付し、社会保障の保護・振興を宣言するなど、彼のいい意味での君子豹変ぶりには目を見張るものがあります。本来、人の上に立つ人にはこうあってほしいものですが、どこかの国の総理や財務大臣のように、もしかしたら、死の瞬間まで、というより「灰」になってもなお「後生の一大事」を心にかけることなく虚しく人生を過ごすというのは哀れというほかありません。ただ「この国民にしてこの総理あり」だとすれば、我々もよくよく後生の一大事を心にかける必要がありますね。