いまは再就職しているわたしの夫ですが、長年勤めあげた仕事を退職したあとの一時期、縁あって生活困窮者支援のボランティアをやっていました。わたしの場合、そんな夫からの情報や自分自身の仕事からある程度実態を知っているつもりでした。でも、コロナ禍で生活困窮の人たちがどんな思いをしているかについては、この度の宇都宮健児さんや山本太郎さんの訴えから伝え聞く範囲にとどまり、詳細はわからなかったのです。
それが、ホームレスの当事者の人たちを取り上げたYouTube動画が配信されていたのを知って、はじめてみてみました。街のいたるところに置いてある無料の求人誌。首都圏のそれは、ふだんならズシっとボリュームがあったはずなのに、いまはコロナの影響を受けて、かつて見たこともないほどペラペラだといいます。ホームレス状態に陥っているからといって、どうやら職探しを諦めた人たちばかりではなさそう。
そんな人たちにとって、頼みの綱である10万円の特別定額給付金。約20年路上で生活している男性が役所へ聞きに行ったら「住民登録と住民登録のある場所に確かに住んでいるという事実がなければ出ない」といわれたとか。この男性、いまはケガをして働けないといいます。ということは、路上にいながらもこれまで働き続けていたのだと改めて驚かされました。
男性の話から、生活保護の申請に行っても水際で追い払われ、相変わらず違法な運用が常態化していることがうかがわれます。ビジネスホテルが準備されていたはずの東京でも全く支援が追いついていないのです。住民票がないということは、給付金をもらえないだけでなく、都知事選挙の投票に必要な入場券も届かないということで、国民主権の行使の道からもはじかれているということ。
つまり、本来なら自治体は、保護が必要な人を保護し、住まいを提供してそこに住民登録できる状態を作り上げ、その人が国民主権を行使できるようにする責務があるにもかかわらず、それをしないというのは憲法違反だと思います。わたしの生まれた家は、記録が残っているだけで十五代続くお寺ですが、それでも、祖父からこう聞かされてきました。戦争で焼け野原になったときには、本当に困った。あらゆるものを売って生き延びたと。生活困窮者の姿は決して他人事ではないのです。