長らく郷里を離れていたわたしが、Uターンしてしばらくの間、仮住まいしていた地域に、とある新興宗教の教会がありました。その教会から布教といえばいいのか、勧誘といえばいいのか、たいてい二人一組の方が地域を巡回していて、うちにもよく来られていました。わたしの夫は、何ごともいったんは、話を聞いてみてそのうえで判断するという姿勢で、その方たちのお話に耳を傾けていたのです。そんな夫が、ある日、その新興宗教の教会にいって説教を聞いてくるというので、わたしは少々不安でした。
もう1年半くらい前の話です。 日本国内だけで約21万人ほど信者がいるとされる新興宗教ですが、夫が2度と近付かなくなったのは、選挙にいってはならない教えだと知ったのが大きかったと思います。確か去年の参院選当日、その宗教の大会が、近くのコンベンションホールで催されていて、大きな観光バスが何台もやってきていたのを覚えています。やめておけばいいのに、バスから降りてきた人に「選挙には行ってこられたのですか」と夫。「わたしたちは王国の指示に従って選挙には行きません」と返ってきた言葉に、案の定という感じでした。
信教の自由を侵害するつもりは毛頭ありません。でも、この宗教に限らず、意識するとしないとに関わらず、同じような行動様式を選び続けている人があまりにも多い気がします。実際の社会で生活していながらも、その社会で現実に起きていることから目をそらし、それぞれの「王国」に閉じこもっているのは、心地いいことかもしれない。しかし、今そんなあなたも含め、人類がかつて経験したことのない歴史の転換点に立たされています。わたしたちが権利を行使できるのは当たり前ではありません。夥しい犠牲の上の一票なんだってことをぜひ、思い出していただきたいです。