愛知県知事のリコールの件が気になっています。 国際芸術祭「愛知トリエンナーレ2019」で、問題となった「表現の不自由展・その後」は、テロ予告や脅迫で、去年8月1日の開始から3日で中止となり、10月14日が会期終了という同月8日になってやっと再開されました。 リコールを呼びかける人たちは「昭和天皇の御影を燃やし、日本兵を侮辱する作品に血税を使った」として知事を断罪しています。しかし、実際には「(それが)どういうものなのか、理解しないままに怒る人が、すごい多い」。どうやら、そういうことのようなのです。
そもそも 「表現の不自由展・その後」の趣旨は、 過去に抗議されて、撤去せざるを得なかった作品ばかりを集め、作品から目を逸らし、ふたをしてきた問題を直視して、対話のきっかけにしようというものだったはず。「昭和天皇の御影を燃やし 」といいますが、決して昭和天皇の写真が燃やされたわけではなく、昭和天皇のコラージュを行った作家の作品が撤去され、その目録が燃やされている様子を撮影した映像だったとか。つまり「天皇陛下万歳」といわない連中の作品を鑑賞どころか、展示の趣旨にすら聞く耳持たず、問答無用で撤去した上、知事をリコールしようというのです。
突然ですが「新たなる知の巨人」と呼ばれる、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、今回のパンデミックを終わらせるために何が必要かを最近のインタビューでこう語っています。「(前略)もし、私たちが世界の団結を選べば、もし、民主的責任を選べば、もし、科学的権威を信じることを選べば、(たとえ)苦しみや死があったとしても、(中略)振り返ってみれば人類にとってよい瞬間に映る」。では、彼のいう「よい瞬間」とは何なのか。その瞬間とは「憎悪を克服した瞬間」であり「幻想や思い込みを克服し、真実を信じた瞬間」だと。人の話を聞かないということは、永遠にこの瞬間が訪れないということです。