男女を問わず、今の今でも、 性暴力被害にあった人が声をあげられない状況が続いています。そうでなくても、同調圧力の強いこの国で、はすみとしこさんや杉田水脈さんらによる攻撃は、被害者を委縮させ、ますます沈黙させるのに十分な役割を果たしたといえるでしょう。そんな中、 アメリカのTIME誌が 「世界で最も影響力のある100人」に、伊藤詩織さんを選んだことは、21世紀の黒船襲来のようで、同世代の娘を持つ母としては、おおいに歓迎したいと思います。
上野千鶴子さんは、詩織さんのことを“ has forever changed ”という言葉を用いて紹介しました。しかし、その一方で、かつて「 前首相にもっとも近いジャーナリスト 」 といわれた加害者と現首相とを巡る疑惑の数々は、いずれもBlack Boxに封印されたまま。本来なら今ごろ、刑に服していたかもしれない加害者の逮捕を、土壇場で止めたのが国家権力なら法治国家としてあり得ません。その意味で、これは、国民全員にかかわる深刻な問題のはずです。
被害から今日までの過程で、ひとつ間違えば命を落としていても不思議のない彼女が、なぜ「100人の一人」にたどり着けたのか。昨日 「自立とは、多くの人に依存すること」 と書きましたが、彼女は、得意の英語で世界中に向かってSOSを発信しました。「助けてください」と言えたとき、人は自立しているといいますが、このことは、彼女が真に自立した女性である証です。世界中が注目するこの問題への対応ぶりで、わたしたち日本人の自立のほどがこれから問われることになるでしょう。