「めし代のない人、お腹いっぱい食べさせてあげます。」こんな貼り紙のしてある学生街の「王将」がついに店じまいするそうです。皿洗いでごはんが只になるという話は以前どこかで聞いた記憶がありました。でもそれが、京都は出町の「王将」だったとは知りませんでした。もちろん行ったことはありませんが、昔、母が出町柳駅のすぐ近くに住んでいたので、あの辺りはとても親しみ深い場所。そんな店主の心意気が、この40年近い間に、 胃袋を満たした腹ペコ学生の数は延べ約3万人を数えるといいます。
この近年稀なほどホットなニュースに、わたしは、また「自立」の話を思い出しました。自立した人というのは、自分で何でもする人ではなく、困ったときにいつでも誰かに助けてもらえる人のこと。ここでいう助けてくれる「誰か」とは、むしろ、親や子ども、配偶者以外の誰かであって、そこには支配も従属もなく、あるのは晴れ晴れとした清々しさだけです。この度、 古希の節目を迎えたというこの「王将」の店主が、この先の人生で仮に困ることがあったとしたら、きっと誰かが救いの手を差しのべるでしょう。
「どんだけ貧乏でも、満腹にさえなれば幸せになれるんや」という彼の店では、衛生上の理由で2年前に皿洗いは中止。今は「昨日から食べていない」学生に無償で食べさせているとか。年々、飲食店の経営環境が厳しさを増す中、よくもこんなことが続けられたもの。近くには、京都大学や同志社大学があって、在学中恩恵を受け、後に偉くなったOB,OGも少なくないはず。そうした人たちが、店主の心意気を引き継いでくれれば、日本の社会も少しはよくなるかもしれませんね。