世の中はおおむね理不尽。そう感じることがあります。会社で不当な扱いをされても「勝ち目がない」とか「関わり合いになりたくない」とかいって闘うまえに諦めてしまったり、盲目的に医者の指示に従い続けて取り返しのつかない障害を負ってしまったり、親が死んだあとの遺産相続を兄弟に任せきりにしている間に手遅れになってしまったり。
とかくこの世は大人しい人、正直な人、従順な人ほど割を食うようにできているのでしょうか。諸行は無常といいますから、いいことも悪いことも長続きはしません。一時は割を食ったと嘆いても、あとから振り返ればたいしたことはなかったとか、あの経験があったから今があると思えることもあるでしょう。とはいえ、渦中にいるときは、そうそう楽観的ではいられないものです。
戦争を経験した世代の方からこんな話を聞いたことがあります。「私を虐めた人はみんな先に死んでしまって、私だけが幸せに暮らしているのよ。だから、復讐なんてしなくていいの。人生は辻褄が合うようにできているんだから」。 言葉の主を知る私としては、それも「諸行無常」な気がします。大事なことはやはり今を生きることで、今起きていることをしっかりと見据え、嫌なものは嫌、おかしいことはおかしいという。そのとき、それができるのはその人だけで、それができてはじめて、自己効力感が湧いてくる。そんな気がするのです。