子どものいない知人女性に「娘さんが二人もいてうらやましい」なんて言われたことがあります。もちろん彼女は、「独立独歩で親の言うことを聞かない」とか、「特に母親に対しては手厳しい」とか、うちの娘たちのことをほとんど知らないにもかかわらず、です。それで、いったい何がうらやましいのかと思って聞いてみると、
近くに優しいお嬢さんを持つ高齢のお母さんがいて、甲斐甲斐しく面倒をみてもらっているのだとか。高齢のお母さんは、幼いころから厳しく育てたので、従順で、特に母親に対しては反抗したことのない優しいお嬢さんに育ったとご満悦。自分は幸せ者だというのです。ただひとつ、お嬢さんが社会との接点をほとんど持っていないことを除いて。
それを聞いたわたしは、思わずハッとさせられました。「子どもが心理的に健康なら、親が勝手な期待を押し付けてきても、子どもはちゃんと反抗し、反発し、親の期待を裏切って自分の人生を自分らしく生きることができるようになる」。こんな話を聞いたことがありますが、わたしは、しあわせの形を取り違えていたのかもしれません。