~運用の変化と実績の蓄積と~
発達障害(ASD=自閉スペクトラム症、ADHD=注意欠如・多動症など)は、以前から就労や日常生活において深刻な困難を抱える人が少なくありませんでした。しかし障害年金制度の実務では、長らく発達障害が制度上明確な対象とされてこなかった経緯があります。
◆【かつての課題】発達障害に対する明確な認定基準が存在しなかった
制度上、障害年金は「身体障害」「知的障害」「精神障害」などに対して支給される仕組みですが、発達障害は従前、これらに明確に分類されていないグレーゾーンとされていました。
たとえばASDやADHDを理由とした裁定請求が実際には多く行われていたにもかかわらず、具体的な認定基準が存在しないという実務上の不都合が指摘されていました。
◆【転機】2011年:発達障害が正式に「精神の障害」として認定基準に追加
転機となったのは、障害者自立支援法および児童福祉法の一部改正です。
これにより、発達障害が制度上、福祉の対象として法的に位置づけられるようになったことから、障害年金制度にも波及がありました。
📅2011年(平成23年)
発達障害が「精神の障害」として認定基準に正式に追加され、障害年金の審査対象として明文化。
この時点で、発達障害が**「制度の対象ではない」という誤解が解かれ、適切な審査がなされる土台**が整いました。
◆2016年:精神の障害に係る等級判定ガイドラインで運用がさらに明確化
2016年(平成28年)には、さらに以下のようなガイドラインが示され、運用が具体化しました。
📄出典:厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年9月30日付 事務連絡)」
発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠如多動性障害等)についても、他の精神疾患と同様に、日常生活能力の判定を中心とした総合的な評価により等級を判断するものとする。
このように、「診断名」ではなく、「どのような困難が日常生活に現れているか」を中心に評価する考え方が明示されたのです。
◆【実務上の変化】2級認定も増加、IQが高くても認定されるケースも
運用の明確化とともに、発達障害に起因する困難さが年金審査に反映されるケースが着実に増えてきました。
🌱 実際の事例:
- 20代男性、ASD+ADHD併存
- 知的能力は平均以上だが、感覚過敏・パニック・過集中・職場での衝動行動などが顕著
- 就労支援を受けても長期定着困難
- 診断書に「対人関係の困難」「常時の支援が必要」と記載
👉 結果:障害基礎年金2級が認定
このようなケースは、かつてなら「知的障害がないから」として不支給になることもありましたが、現在では実生活における困難さがしっかり評価されるようになっています。
◆【制度上の確認】IQが高くても年金の対象になり得る
しばしば「知的障害がない(IQが高い)=年金は無理」と誤解されますが、以下の厚労省のQ&Aでも、明確に対象となると示されています。
📄厚労省Q&Aより(精神の障害に係るガイドライン関連)
Q:知的能力が正常範囲の発達障害でも対象になりますか?
A:はい。知的能力に問題がなくても、日常生活能力に著しい制限があれば対象となります。
◆まとめ:発達障害は今や「制度の対象」です
- ✅ 2011年に正式に認定基準に追加
- ✅ 2016年のガイドラインで運用が具体化
- ✅ IQや学歴ではなく、**「生活の困難さ」**で評価される
- ✅ 実務上、ASD・ADHDによる2級・3級認定も増加中
✍️ ご本人やご家族のみなさんへ
発達障害があるご本人やご家族が、「年金は無理だろう」と思い込んで請求を諦めてしまうことは今でも多くあります。
しかし制度の見直しとともに、適切な診断書と申立てを通じて、支給につながる可能性が確実に広がっています。過去に不支給だった方も、制度運用の変化をふまえて再度チャレンジする価値があるかもしれません。
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