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「会社に言い出せない…」若年性認知症について

2025 12/02
2025年12月2日
目次

■ 「まさか、こんなに早く…」

40代・50代。
まさに働き盛り。家庭の中心で、生活の柱。

そんな時期に、銀行の暗証番号が思い出せない、書類の意味がわからない、
聞いたことをすぐ忘れてしまう――。

最初は「疲れているだけ」と思いたい。
でも、違和感は少しずつ生活を侵食していきます。

そして専門医を受診したその日。

――「アルツハイマー型認知症です。65歳未満なので若年性認知症に該当します」

現実を受け止められず、足元が崩れるような気持ちになる。
これは誰にでも起こり得ることです。


■ 若年性認知症は、“高齢の認知症”とは衝撃の重さが違う

若年性認知症は、「病気の種類」ではなく
“65歳未満で発症した認知症” の総称です。

アルツハイマー型でも、前頭側頭型でも、脳血管型でも。
ただ、年齢が若いため、社会的ダメージが桁違いに大きくなります。

● 現役で働いている

→ 収入が止まると生活が崩れる

● 子どもがまだ自立していない

→ 教育費が必要

● 親も高齢で支援側

→ 親子ダブル介護の可能性

● 友人や同僚には話しにくい

→ 孤立しやすい

だから、ご家族は苦しみます。
そして多くの方が口にします。

「会社には言えない。でも働いてもらわないと困る」

この矛盾こそ、若年性認知症の“最大のつまずき”なのです。


■ ご家族の胸の中で起きているリアルな葛藤

  • まだまだ働いてもらわないと困る
  • でも負担をかけているならつらい
  • 会社に病気を伝えたら迷惑をかけてしまう
  • けれど隠したまま働かせるのも怖い
  • 親には心配をかけられない
  • そして…自分ひとりで支えられるのか不安

これは、多くのご家族が“声に出せずに抱えている本音”です。


■ でも――黙って働き続けることには危険があります

アルツハイマー型認知症では、

  • 聞き取った情報を保持できない
  • 手順を順序立てて考えるのが難しい
  • メモを見ても意味が取れない
  • 書類作成に時間がかかる
  • “新しいことを覚える”のが難しくなる

こうした変化が、ゆっくり・確実に進みます。

これを職場が知らないまま仕事を続けると、

  • 大きなミス
  • お客様トラブル
  • 同僚からの誤解
  • ご本人の自信喪失
  • うつ状態

このような危険につながります。


■ 会社への伝え方には“段階”があります

いきなり「認知症です」と伝える必要はありません。

① 信頼できる上司ひとりに

「最近、もの忘れがひどくて医療機関で検査しています」

これで十分です。

② 病名より“困っている事実”を伝える

  • 手続きの順番がわからなくなる
  • 相手の話を覚えていられない
  • メモをしても整理が難しい

事実を伝えるほうが、誤解されにくいのです。

③ 外部の専門支援につなぐ

  • 若年性認知症支援コーディネーター
  • 地域障害者職業センター(職業評価・ジョブコーチ)
  • 産業医

会社の負担を減らし、ご本人も守れる方法です。


■ 「働かないと生活が…」という不安も、制度で支えられます

若年性認知症の方が利用できる主な制度は次のとおりです。

  • 障害年金(働きながらでも受給可能)
  • 傷病手当金(給与の3分の2)
  • 自立支援医療(医療費1割)
  • 精神障害者保健福祉手帳
  • 失業等給付(退職後)

とくに障害年金は、
仕事を続けていても申請可能 な制度です。

「働いていたらもらえない」という誤解は非常に多いですが、
若年性認知症は進行性であり、日常生活に影響が出やすいため、評価されやすい疾患の一つです。


■ ひとりで抱え込まないでください

今回のケースのように
「働いてほしい」と「伝えられない」の間でもがく方は本当に多いです。

若年性認知症は、
病名だけでなく “その後の支援”が生活の質を左右する病気 です。

どうか、あなたひとりで支えようとしないでください。
支援者とつながれば、生活は確実に安定します。

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