ヒトラーは軍やクーデターによってナチス・ドイツを確立したわけではありません。ワイマール憲法は 世界一民主的な憲法のはずでした。しかし、その中のたったひとつの条文が、ヒトラーに独裁の道を開かせてしまったのです。その過程と今の日本の情況が、あまりにも酷似していて背筋に寒いものを感じている人はたくさんいると思います。
当時のドイツは、第一次大戦に負けて巨額の賠償金を抱え込んでいました。いったんは立て直すことができた経済をその後の世界恐慌が直撃します。街は失業者であふれ社会全体が暗雲に覆われる中、まだ失業していない人々の心にも失業への不安や恐怖が渦巻くようになっていきました。そんな中、ヒトラーは、経済対策と民族の団結を喧伝していったのです。
今の日本はどうでしょうか。内閣府が今日発表した2019年10月~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、 2月に発表された速報値の1・6%減(年率換算6・3%減)から下方修正。 物価変動の影響を除いた実質GDPが前期比1・8%減で、このペースが1年間続くと仮定した年率換算では7・1%減でした。
京都大学の藤井聡先生によると、これは、平均して国民が7・1%貧乏になったということで、東日本大震災の-5・5%を上回っています。しかし、怖いのはその先で、この数字にはコロナショックの影響が含まれていないということ。そんな中、ヒトラーならぬ安倍晋三首相は「国民一丸となって」を連発します。
ヒトラーを独裁に向かわせたのは ワイマール憲法48条の「国家緊急権 」。今週13日に成立の見通しと報じられているのは「緊急事態宣言」を盛り込んだ新型コロナウイルス感染症に対応する特別措置法で、日本国憲法ではありません。しかし、自民党の憲法改正案に緊急事態条項が盛り込まれていることを思えば、いずれそこへ持っていこうとする力学が働くことは目に見えています。