インド北部から数十年ぶりにヒマラヤ山脈が見渡せるようになったと聞いて心底驚いています。
今はマスクが欠かせませんが、インドにいた頃には、また違った意味でマスクが欠かせませんでした。あの凄まじい大気汚染です。無秩序に道路を埋め尽くすバス、個人タクシー、リキシャにバイクに牛。大通りの横断は、毎回、命がけ。車にひかれたらひかれた方が悪いといったふうな、平均年齢20歳代、人口13億の国の、爆発的なエネルギーと混沌に「地球温暖化対策」などという言葉はもはや何の説得力も持たない印象でした。
それが、今回のロックダウンで、工場は閉鎖され、道路からは車が消え、空の便も運航を停止したため、ここ数週間で大気汚染が劇的に改善したのだといいます。奇しくも、16歳のグレタ・トゥーンベリさんが、 国連で地球温暖化対策を訴えるために、炭素ガス排出ゼロのヨットで大西洋を横断した、まさに同じ2019年発生の新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威によって。
絶滅の危機に瀕した動植物をはじめ、地球そのものを救うことは、人間には不可能だったに違いありません。誤解を恐れず言うならば、グレタさんやCOVID-19の出現は、21世紀の神話を見せられているようで、地球そのもののホメオスタシス(恒常性)の働きに思えてならないのです。 COVID-19 による死者は、全世界で既に10万人を突破しています。これらの犠牲を無駄にしないためにも、破滅から持続可能性へとコロナの前後で世界的な経済活動のあるべき変容が問われているのではないでしょうか。