以前、こんな話を聞いたことがあります。田舎暮らしに憧れて移住した人が、地域に溶け込もうと村集会に参加するようになった際のこと。村人が村の行政に対して口々に問題点を指摘するので、(移住した人が)本気になって問題解決を試みたが誰もついてこない。村集会での村人の態度は、単なるガス抜きで、みんな日ごろのうっぷんを吐き出したかっただけだと後でわかったというオチでした。
かつて、わたしが役場にいた頃にも、似たような話を聞いたことがあります。「(自分が直面している不条理に対し)考えれば考えるほどしんどくなるだけだから、考えないようにしている。」というのです。また、別の人はこう言いました。「(自分が不満や憤りを抱えていても)言うな。言っても嫌われるだけ。」だと。
わたしの実体験では、冒頭の村人は主に男性。「考えない、言わない」のは主に女性です。「考えない、言わない」これらの女性たちは、自分が考えない、言わないだけではなく、たとえば、(当時まだ若かった)わたしにもそれを強要するのです。もちろん、時代も変わっているし、こうした態度に疑問を感じない人ばかりではないはずですが、「大本営」の頃からこの国が変わらない背景には、そういう事情があるのかと、ふと思いました。