八十二歳の母が、近頃ときどき「 老いを生きるのは初めて 」などというようになりました。母の、明治生まれの叔父の「老いるとはこういうこと。よく観ておけ!」という言葉を思い出すと何度も繰り返します。
持病の悪化で2年前には、一度、危篤状態にまで至ったものの、その後、奇跡の復活を遂げ、幕張メッセでの「武器見本市」反対をはじめ宗教者の平和運動に獅子奮迅ぶりをみせた母でした。
わたしだって六十歳と数か月の今日を生きるのは初めてだけど、母の言葉はきっと、かつて経験のない不自由さを物語っているのでしょう。たとえ、どんなに不公平な世の中だとしても「老い」と「死」だけは平等ですね。