コロナで延び延びになっていた赤木俊夫さん(森友事件で自死に追い込まれた元近畿財務局職員)の裁判が今日やっとはじまります。夫が遺した手記を世に問いたい。そして何より、なぜ、夫が死ななければならなかったのかその真相が知りたい。でないと自分は人生をリセットすることができない。しかし、財務省が怖い、マスコミが怖いと逡巡した妻。当初仮名の「昌子さん」は、やがて本名の「雅子さん」になり、今朝のネットニュースではその肉声が聞こえてきました。
彼女の変化を支えたものは、いったい何だったのか。それは、彼女の孤独と悲しみを溶かす弁護士の言葉であり、弁護士を介して届く励ましの手紙であり、35万を超え、今も増え続ける「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」を訴える署名の存在だったといいます。
一方、同様にコロナで延期されていたもう一つの裁判が明日からはじまります。元TBSワシントン支局長からの性暴力に対するジャーナリスト伊藤詩織さんの民事損害賠償請求勝訴を受けて、被告側が控訴した控訴審です。彼女に関しては、インターネット上に70万件もの書き込みが存在し、その多くにデマやバッシングが含まれていたといわれています。伊藤さんには、敵も多いが味方も多い。彼女の身に起きたことを、本人よりもっと怒ったり泣いたりしてくれる仲間の存在がその著書に語られています。
以上ふたつの裁判から翻って、先日ブログに書いた「3歳児衰弱死」の若いシングルマザーを思い出しています。自らも親の虐待や育児放棄に傷ついて、ほんの数年前まで児童養護施設で暮らしていた女性でした。彼女に伊藤さんのような仲間の存在があったら、赤木さんのような励ましがあったら、最悪の事態を招く前に「助けて」が言えたかも。「タラレバ」は、してもしかたのない話とされていますが、既に言葉を奪われている人の孤立を少しでも防ぐには、必要な思考のプロセスかも知れないと思っています。