何年か前に、滋賀電車内駅構内連続強姦事件というのがあって、JRサンダーバードの車内で泣きながら男に連れていかれる女性を、乗り合わせていた乗客が目撃していたにもかかわらず、車掌に通報することすらせず、見て見ぬふりをしたと報道されたことがありました。今日、BSのドキュメントJをみてあのときと同じ衝撃が蘇えってきて、いま立ち尽くす思いです。
これは「ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~」と題した北海道放送の30分番組を1時間番組として再編集したドキュメンタリーです。ちょうど1年前の参議院選挙で北海道入りした安倍総理が、自民党の候補者の応援演説をする、その前後の様子から番組は始まります。意外に大勢の聴衆が「安倍総理を支持します」のプラカードを掲げ、日の丸の旗を振っている様子は、わたしの目には異様ですが、次の瞬間もっと異様なことが起きました。
総理の演説開始の1分後「安倍やめろ」の声をあげた一人の青年を私服、制服の警察官が瞬く間に連れ去っていきます。映像からは、21人の警察官が彼を取り囲んでいることがうかがわれ、しかも、その中の何人かは動画を撮影しています。ただ、声をあげただけで警察に排除される。年金生活をするある女性は、声もあげていないのに「年金100年安心プランどうなった?」というプラカードを掲げようとした瞬間排除されました。この日排除された人は、わかっただけで9人いたといいます。 https://note.com/yajipoi/n/ncb998bd3701d
北海道警察に対する告発に対し、捜査していた札幌地検はその後不起訴処分を言い渡しています。しかし、道警の主張の根拠となった事実認定は、警察官からの聞き取りやネット上の動画からの決めつけで、当事者の話は全く聞いていなかったのだとか。何より怖いのは、安倍自民党の支持者たちに対しては、プラカードを掲げようが声をあげようがおかまいなしで、彼らを含め、道行く人は、排除される人たちのことを見て見ぬふりをしたということ。我々に共通の権利が奪われることに対する感受性の低さと無関心が何よりも恐ろしいです。
以前、このブログでも書いたことがありますが、わたしの暮らす高松市の市議会では、自民党の古参議員による悪質なヤジが常習化しています。傍聴席には警備員がいて、ヤジに対する市民の抗議は許さないのに、議会事務局の悪質なヤジに対するお咎めは一切なしです。番組には、かつての言論弾圧「生活図画事件」で零下30℃の牢獄で拷問を受けた1941年当時の生き証人も登場しています。心理学的には、一人なら認識できることが集団では見えなくなるといった研究もあるそうですが、それなら余計に、この「北海道ヤジ排除」といい、今回の東京都知事選挙といい、過剰な排除が何をもたらすのかを真剣に考えるときだと思います。