梅雨明けが遅れていて、福岡県の小呂島(オロノシマ) ではゆうべ 「50年に一度の記録的な大雨」が降ったそう。幸い浸水被害などはなかったもようですが、土砂災害の危険が高まっています。先日、ラジオを聞いていたら「今年の九州豪雨による水害にあった人も、まさか自分の家が…という感想を述べる方が多いが、なぜ逃げなかったのか」という声が聞こえてきました。2年前の西日本豪雨の際も、少々川の水位が上がっても、自分のところは大丈夫とか、先祖伝来の田んぼや畑が心配だから残るといって動かない人もみられたとか。
かつてわたしも、中山間地域に暮らし、そこの役所にいたので、皆さんのお気持ちは重々理解できるつもりです。中山間地域とは、 いまでも旧家の(主に)長男が先祖から引き継いだ田畑を守る地域のことで、山地の多い日本では、中山間地域が総土地面積の実に7割を占めているといわれています。今回、甚大な被害を受けた熊本県の人吉市を含め、全国の農家の4割がそうした地域で、世代を超えて農業生産を行っています。つまり、そうでなくても、食料自給率の低いこの国で、繰り返しやってくる自然災害により、中山間地域が破壊されるということは、他でもない、わたしたちの食料安全保障が脅かされているということではないでしょうか。
コロナショックをたどった先に食糧危機が懸念されている割には、政治家をはじめ都市部に暮らす人は、あまりに無頓着な印象です。地震や水害で、同様の悲劇が何度繰り返されても、権力の側にとっては他人事という現実。ラジオのキャスターの「なぜ逃げなかったのか」が、わたしには、DVの被害者に向けられた「なぜ逃げなかったのか」に重なって聞こえます。「DV(ドメスティック・バイオレンス)」が公衆衛生の問題、人間社会の健康にかかわる問題であるのと同じで、中山間地域の破壊が食糧危機に直結していることを思えば、これは生存にかかわる問題で、誰にとっても自分につながることだと思います。