イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリは、著書「21Lessons」の中でこう述べています。「全人類は今や単一の文明を構成しており、すべての人が共通の難題と機会を分かち合っている。それにもかかわらず(中略)無数の集団がナショナリズムに基づく孤立をしだいに支持するようになっている。」さらに「気候変動は今起こっている現実」「(こうした変化のせいで)世界の大半が居住不能になったり、何億もの難民が出て新たな住み処を探し求めたりすることになる」と。
わたしたちの暮らすこの国でも、たった、今月一月の間に、いったいどれだけのひとが、安心して暮らせる住み処を失ったでしょう。日本3大急流のひとつ、最上川が昨夜遅くから今日にかけて氾濫しました。山形市の蔵王成沢では、住宅街の側溝から水があふれ道路が冠水。浸水被害を受けた女性は「こんなことは、はじめて。たまげた、恐ろしいものだね。」と語っています。何十年、住み慣れた場所で「こんなことは、はじめて」が、また繰り返されたのです。
被災された方たちは、もちろんのこと、救助や捜索、後片付けにあたる警察、消防、自衛隊にボランティアの方たちの中にも心を病む人がいるかもしれません。かつて、東日本大震災の際に、メンタル不調に陥った自衛官を担当させてもらったことがあります。蔵王成沢の女性は、恐ろしいものだといいますが、恐ろしいのは自然災害ではなく、人々の心が解決に向けてまとまらないこと。去年までは、そこまで思わなかったわたしも、このままいけば「ロヒンギャ」の人々のように日本人が難民になる日が来るかもしれないなんて思うようになりました。考えすぎで終わればいいのですが。