首相の後継者を決める自民党の総裁選。立候補を表明した菅官房長官の記者会見が今月2日に開かれました。そのときのお話や、一般に公開されている情報から、菅官房長官は、敗戦まもない1948年、雪深い秋田の農家に引揚者の長男として生まれ、上京後は、段ボール工場の作業員として働いた経歴をお持ちだとか。後に働きながら大学を卒業し、民間会社を経て政治家の秘書になったのが、政界入りのきっかけだったといいます。
何の地盤も持たない、世襲政治家とは対極にいながらも、ここまで上り詰めたジャパニーズ・ドリームを、わたしたちはこれから見ることになるのでしょうか。それでも「私は世襲政治家を批判して出てきた人間 (文春オンライン)」というご本人の言葉とは裏腹に、冒頭の記者会見では、安倍政権の反省点を聞かれても反省の言葉は聞かれず、「モリ、カケ、サクラ」についても闇に葬りますという趣旨のことをいっています。
ということは、その件について納得できない多くの国民を煙に巻き、難局を乗り切るためのピンチヒッターなのでしょうか。とはいえ、映画「君はなぜ総理大臣になれないのか」に描かれているとおり、志や情熱だけで手に入るものではないそのポストを、地盤も、看板も、鞄も持たなかったかつての段ボール工場の作業員が、いままさにつかもうというのです。ご本人自ら、敢えて 「私は世襲政治家を批判して出てきた人間 」というからには、世襲政治家には真似のできないスペクタクルを、これから見せてくれるかもしれませんね。