「質問は簡潔にお願いします」「質問に入ってください」「次の予定がありますので、次の質問を最後でお願いします」。東京新聞の望月衣塑子記者が質問を始めると、おおよそ25秒ごとに妨害する。それが、最も重要な任務だった内閣官房内閣参事官(官邸報道室長) 。菅官房長官の防波堤と呼ばれた上村秀紀氏をご存じでしょうか。通例1~2年で交代するポストに3年も留まって(2020年8月1日異動)、見事に期待にこたえた官僚ですが、望月記者のドキュメンタリーをみて改めて、その徹底ぶりに呆れてしまいました。
以前にもお話したことがありますが、わたしの暮らす高松市の市議会では、鋭い女性議員が質問に立つと、少なくともわたしが傍聴した際には必ず、複数の男性議員からヤジが飛び交います。ヤジの内容は、極めて幼稚で、「何回言っても同じ」とか「時間が来てるから早く終わろう」など、選挙で選ばれた議員に対する敬意がないばかりか、市民に対する冒とくともいえる目に余るものです。上村氏を含め彼らが発しているのは「(政権に批判的なことをいう)お前らは黙ってろ」というメッセージ。
記者会見の会場や議場で質問するということは、男女の別を問わず生易しいことではないはずです。相手に話を聞こうという姿勢あってこそ、人は話ができるのであって、怒られたり、否定されたり、攻撃されたりでは委縮するのが当然です。 それが目的でやっているといわれても仕方のない、報道室長の妨害や市議会のヤジが醸し出す空気がどのようなものか。それを知る日本人は少なくないと思います。そうした空気を壊そうと挑み続ける力が働く間はいいとしても、そうでなくなったときにどうなるのか。わたしたち一人ひとりの想像力が問われていると思います。菅官房長官が次の総理なら、なおのことではないでしょうか。