わたしの名前は、母が付けた名前です。十五で母親を亡くしたわたしの母は、二十歳で父と結婚。二十二でわたしを出産しました。お寺からお寺に嫁いでわたしを産んだ幼すぎる母親が、ありったけの思いを込めた「法子」という名前。わたしは自分の名前にアイデンティティすら覚えて今に至っています。このほど防衛大臣に就任した岸信夫氏は、奇しくもわたしと同い年。「昭和の妖怪」と呼ばれる岸信介の、一字をとったその名前に、込められた思いを当のご本人はどう受け止めてきたのでしょう。
満州の占領で重要な役割を果たし、東条英機の側近でもあった岸信介が、 A級戦犯として拘束された後、4年で日本の首相になったときと同じか、ひょっとするとそれ以上の衝撃が、いま中国をざわつかせているとしても不思議はないのではないでしょうか。「安倍晋三」という響きと違って「岸信夫」という響きには、ダイレクトに「岸信介」を連想させる効果があります。しかも、当のご本人は、これまでなんども靖国神社に参拝していて2013年には兄の名代として参拝しているとか。
これらのことから、中国ばかりか、国際社会はいったいどんなメッセージを受け取るのでしょう。横田めぐみさんの父は他界し、母も既に84歳。拉致問題の解決には国際社会の協力が欠かせませんが、中でも中国はその鍵を握っています。「因果」という言葉を検索すると「仏教で、(略) 特に、前世の悪い行いのむくいとして現在の不幸があるということ」と出てきますが、それは違う気がします。「因」と「果」が同時に成就する世界が念仏であって、それは他でもなく中国を経由して日本に入ってきたということが、個人的にはもっと注目されていいのではと思います。