源義経は衣川(ころもがわ、岩手県平泉)では死なず、モンゴルでジンギスカンになったという 「義経伝説」。 西郷隆盛は城山では死んでおらず、大陸にわたったという「西郷伝説」。 それらを彷彿させるもう一つの伝説をご存じでしょうか。お天気に恵まれた連休初日の昨日、徳島県の祖谷渓谷へ出かけました。渓谷には、シラクチカズラ(別名サルナシ)のつり橋がかかっています。子どもの頃、何度となく渡ったはずのこのつり橋が、平家落人伝説の舞台とは知りませんでした。
壇ノ浦の戦いに敗れ、幼い安徳天皇も祖母に抱かれ入水したと伝わっていますが、実はそれは影武者で、本物は 平国盛(教経)一行に伴われ、祖谷の地で、平氏再興の望みをつないだというのです。何十年ぶりに昨日、その場所へ実際に行ってみて 「義経伝説」や 「西郷伝説」はともかく、この「もうひとつの平家物語」は本当かも知れないと思いました。もっとも、安徳帝については、各地に伝説が遺されていて謎のベールに包まれたままではありますが。
彼の生年は1178年とされていて、1173年生まれの親鸞聖人とはほぼほぼ同年配。もしも祖谷の伝説が本当なら、ちょうど聖人が比叡山にいた頃に祖谷へ落ちのびたことになります。大地震に疫病、戦乱に飢饉と、末法の世とされた当時は、パンデミックが世界を震撼させる今と状況が重なります。祖谷に伝わる「もうひとつの平家物語」では、彼は短い人生を幸せに暮らしたといいますから、落人からの再出発が、イノベーションの鍵かもしれない気がします。